モヤシネマ

最新洋画、ときどき邦画

「ホーホケキョ となりの山田くん」の感想。何度観ても泣ける名作!過小評価されすぎてない?

この世の中でおそらく最も過小評価されているアニメ映画が「ホーホケキョ となりの山田くん」だと思う。

どんなマイナー映画だよ、知らねーよって人がいるかもしれないが、天下のスタジオジブリ、高畑勲監督作品である。
そして制作費20億円、ジブリ史上最大級の作画枚数を投入して作られた大作なのだが、興行成績はさっぱりで大赤字。
その責任を取らされてか高畑監督は「かぐや姫の物語」まで第一線を退くことになる……と、結果だけ見ればどう考えてもスタジオジブリの黒歴史でしかない。

てなわけで、僕もDVD借りたときは全然期待してなかったよね。まだ観たことないから押さえとくかー、くらいの気分。

観始めたら最後、号泣ですよ、号泣。家族のいる幸せに号泣。

冒頭の結婚式のシーンで、新郎新婦がボブスレーに乗り込んで疾走、大海原に漕ぎ出していく場面があるんですが(あるんですよ)、ミヤコ蝶々の語りと矢野顕子の音楽をバックに、ひとりまたひとりと家族が増え、親が子供とともに成長していく様子がファンタジックに描かれていくと、気がついたら涙がぼろぼろこぼれている。

読売新聞に連載された4コマ漫画が原作というだけあって、作品全体を貫く大きなストーリーはありません。

父・たかし、母・まつ子、長男・のぼる、長女・のの子、祖母・しげの山田一家の日常が、30分程度の短いエピソードをつなぎ合わせ、淡々と描かれていく。
そこには笑いやちょっとしたドタバタ、のの子がデパートで迷子になったり近所に不良がたむろするといったちょっとした事件はあるけれど、大してドラマチックなできごとが起こるわけでもない。

そりゃそうよね、普通の家族の話なんだから。

でもちょっと考えてみて。

僕らが普段過ごしているなんてことない日常って、まさに新聞の4コマ漫画みたいなものでしょ。

大事件なんて全然起こらない。
いつもの家族や友人としょうもない話で盛り上がって、オチがあるんだかないんだかわかんないまま別れて次の日になって、ときどき季節の移ろいに目を向けつつ、気がつけば一年経っている。

そんな、ごくごく普通の日々の中にこそ、人生の豊かさが輝いている。
それをわざとらしく物語的にすることなく、さりげなく描くためには、「となりの山田くん」は最適な題材だったのですよ。
雨の日に家族が傘をもって迎えに来てくれるなんてありふれた場面でも泣かせてくる技術は見事。

ラストシーンも実にさりげない終わり方ながら、鑑賞後は、ふだんあまり連絡を取ってない両親や兄弟にLINEでも送ってみようかな、と思わせてくれる力のある一本。
オススメです。

プライバシーポリシー