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【ネタバレなし】「悪い奴ほどよく眠る」の感想。衝撃のラストが待ち受ける社会派エンターテイメント!

2018年、日本国内の政治は「森友学園問題」で揺れに揺れております。
愛国的な教育を行う学校法人に、10億円する国有地を1億円で払い下げたとかいう疑惑がきっかけで国会は大荒れ。
はては、国有地売却を担当した職員が自殺してしまう始末……

こんな時代にぜひ観ておきたい映画がありました。
日本を代表する映画監督・黒澤明の「悪い奴ほどよく眠る」です。

10点満点中10点

「悪い奴ほどよく眠る」のあらすじ・基本情報

【あらすじ】
土地開発公団の副総裁、岩淵の娘・佳子と、岩淵の秘書・西との結婚式。
公団の課長補佐・和田が汚職容疑で逮捕されたばかりであり、異様な雰囲気が漂っている。
会場に運ばれてきたウェディングケーキを見て、参加者たちは目を疑った。
ケーキは公団のビルの形をしており、7階の窓に赤いバラが刺さっている。
その窓は、5年前に当時の課長補佐であった古谷が、公団の汚職にからんで飛び降り自殺した場所だったからだ。

警察に尋問されていた和田は黙秘を貫くが、釈放後に自殺を図ろうと火山の火口へとむかう。
ところがそこに西が現れ、彼の自殺を阻止する。
実は、5年前に自殺した古谷は西の父親だった!
西は、汚職を繰り返す公団幹部への復讐を計画していたのだ。
和田を仲間に引き入れた西は、狙い通り次々と公団幹部たちを痛めつけていくが……

【基本情報】
監督: 黒澤明
出演: 三船敏郎、森雅之、香川京子、三橋達也、志村喬
上映時間: 150分
公開年: 1960年

痛快なストーリーの先に社会の闇を描いた、エンタメの傑作!

時代劇のイメージが強い黒澤監督ですが、現代をテーマにした映画もたくさん遺しています。
中でも「悪い奴ほどよく眠る」は傑作の部類に入る一本です。

ヒーロー役も悪役もそろってキャラクターがかっこいいんですよ!

主人公の西を演じるのは、初期〜中期の黒澤作品には欠かせない三船敏郎
一般的には時代劇スターという印象がありますが、この作品ではスーツに眼鏡、ポマードを決めて登場します。
復讐に心を燃やしながら、周りにそれを悟られないよう冷静に行動する、まるで一流スパイのような立ち回り。

西の前に立ちはだかる、土地開発公団・副総裁の岩淵を演じるのは森雅之
当時まだ49歳で、三船敏郎とは10歳も年齢が変わらないのですが、実年齢を上回る老け役をまったく違和感なく演じきってます。
こいつがホントに殺したくなるほど悪い奴なんだけど、立ち居振る舞いはさすが政財界のトップだけあって妙にかっこいい。
彼は黒澤作品の中でもトップクラスの"ヴィラン"ですよ。

政治汚職を扱った重たいテーマの作品ながら、ストーリー運びはかなりエンタメ的です。
自殺を図った和田を死んだことにし、彼を幽霊にしたてあげて復讐相手を呼び出す展開なんかほとんどコメディですよ。
主人公・西の暗いエピソードを交えながらも、復讐を遂行していく過程は見ててスカッとします。

重要な要素となってくるのが、香川京子演じるヒロイン・佳子と西との関係。
西は復讐の最大の相手である岩淵に近づくために佳子を利用していたのですが、次第に彼女へ心が動いていく……
ふたりのロマンスの行方にも注目です!

そしてそして、「悪い奴ほどよく眠る」最大の魅力は衝撃のラストにあります。
黒澤明監督の、社会に対する冷静な……いや、冷酷ともいえる分析力がいかんなく発揮されたストーリー展開が待ち受けている。
僕は最初に見たとき、あまりの衝撃に全身から力が抜けて崩れ落ちるかと思いましたね……。


盛大にネタバレするから、鑑賞前に Wikipedia とか読んじゃダメだぞ!


これ60年前の映画なんですけど、いま観ても取り上げられているテーマに古さを感じません。
昭和が過ぎ去り、もう平成が終わろうというのに、日本社会はいったい何をやってきたのか……
われわれ一般市民も、政治が汚れている現状に気づきながらも、無視を決め込んできたのではないか……
悪い奴を眠らせているのは、いったい誰なのか。
そんなことを鑑賞後に考えさせられる一本でした。

「悪い奴ほどよく眠る」は、DVDのほか Amazon で動画配信もされています!
レンタルなら400円と手軽な値段で楽しめるので、下のリンクからチェックしてみてくださいね。


黒澤明作品については、全30作品をランキング形式で紹介したまとめ記事もあります!
もちろん、管理人のはっしーが全部鑑賞した上で記事を書いてますよ〜。

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