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映画「バリー・シール アメリカをはめた男」の感想。ポップで明るくて笑える「冷戦の悲劇」だ!

トム・クルーズ主演の最新作「バリー・シール アメリカをハメた男」(原題「American Made」)を、日本での公開に先駆けてニュージーランドで鑑賞してきました!

冷戦下のアメリカに実在した伝説のパイロットをトム・クルーズが演じるこの作品。

予告編では「カッコイイ犯罪映画!」って感じですが、実際は、ポップで明るくて笑える「悲劇」といった趣のハードな映画でした!

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10点満点中6点

あらすじ

民間航空会社のパイロットとして働くバリー(トム・クルーズ)は、仕事ついでに葉巻を密輸する裏稼業にも手を染めていた。CIAの職員・シェイファー(ドーナル・グリーソン)は、彼の操縦技術と運び屋としての腕に目をつけ、中米で活動する共産系ゲリラの偵察、および機密書類の運搬役としてヘッドハントする。


順調に任務をこなすバリーだったが、ある日、給油するために着陸したコロンビアで、現地の犯罪組織「メデジン・カルテル」から接触を受け、アメリカに麻薬を密輸する仕事を強引に任されてしまった。戸惑いながらも優秀な運び屋として活躍を重ね、CIAとメデジン・カルテルの両方から高額の報酬を受け取り、どんどんリッチになっていくバリー。妻・ルーシー(サラ・ライト)も、最初はバリーの稼ぐ大金に疑いの目を向けていたが、やがて贅沢な暮らしを堪能しはじめる。


しかし、そんな生活が長続きするはずはなく、事態はバリーの想像を超えた展開へと転がっていく……。

トム・クルーズが伝説の犯罪者を好演。悪いやつなのに憎めない!

この映画の題材となっているパイロット、バリー・シールは、70年〜80年代のアメリカで活躍した、伝説的なCIAエージェント、そして麻薬密輸王です。彼の数奇で過酷な運命を、トム・クルーズが軽妙に演じています!

↓実際のバリーはこんな顔↓

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(出典: Barry Seal - Wikipedia)

彼は、アメリカ政府に対してはCIAエージェントとして、中米諸国の共産系ゲリラの基地を偵察する一方で、現地の麻薬カルテルと結託して密輸でボロ儲けするという、とんでもないことを平然とやってのけた男です。

それでも全然いやらしく見えない、むしろ痛快に感じるのは、バリーのどうにも憎めない人格のおかげでしょう。

バリーは、彼の勤める航空会社で最年少のパイロットであり、操縦の天才なんですね。とにかく飛行機が大好き、フライトが大好き。敵地に単身乗り込んでいく偵察任務は、一歩間違えれば撃墜される危険もあるのに、彼はそんな状況ですら楽しんでいるように見えます。

コロンビアのマフィアに詰め寄られ、超短距離での離陸を迫られるシーンは、バリーのパイロットとしての技術と誇り、そして空を飛んだときの爽快さが特に表現された場面ですね。

さらに、彼はめちゃめちゃお人好しなんですわ。頼まれた仕事は断れないタイプ。いかんせん優秀なパイロットなんで、CIAと麻薬カルテルの両方から、次はあれやってね〜これやってね〜と、どんどん仕事が降ってくる。

どこかで「もう嫌だ!」と辞めることもできたと思うんですよ。予告編でも出てる通り、家に札束の置き場所に困るほどお金を稼いでいて、これ以上働く必要なんてなかったはずなんです。それでもバリーは全然仕事を断らない。電話を2台も3台も同時に使って、スケジュールのやりくりをしながら任務をこなしていく。優しいやつだな〜。

演出や俳優の演技がとことんポップ。つらい話なのに笑えちゃう!

バリーのキャラクターに惑わされて見えなくなりがちですが、彼の運命は相当に過酷ですよ。

だって、民間の航空パイロットとして十分幸せな生活を送ることもできたのに、CIAのエージェントにされ、なかば脅迫されて麻薬カルテルの運び屋にされ、銃撃されたり牢屋にぶちこまれたりしちゃうわけです。いくら大金をもらってるとはいえ、お金はたくさんあれば幸せってわけでもないですしね。

しかも、それらの危ない仕事は全然バリーの意思じゃありませんから。「あれやれ」「これやれ」と言われた仕事をこなしているうちに、どんどん人生がおかしくなっちゃうんです。

そんなハードな話ながら、アニメーションも用いたポップな画面構成や、各所に散りばめられたギャグ演出のおかげで、笑いながら気軽に鑑賞できる映画になっています。「嫌われ松子の一生」にも似た印象を感じましたね。

さらに、魅力的な脇役たちも、作品の軽妙さに一役買っています。

バリーをCIAに引き込む男、シェイファーは積み荷の上で「どんどんやろうぜ〜!! Hooooo!!」とか言いながら腰振って踊っちゃうような、エージェントにはとても見えない軽いヤツ。コロンビアの麻薬カルテルのメンバーたちも、顔は強面ですが、スペイン語なまりのカタコト英語が愛嬌を感じさせるキャラクターになってます。ほんとは裏でたくさん人殺してるはずだけど……。

しかしですねー、生き馬の目を抜く厳しい世界を生きるCIAエージェントやマフィアが、ただの面白いヤツなわけないんですよ。

作品を覆う軽妙さってのが実に見事な罠で、「お仕事キツイけど、給料めっちゃもらえるし、仲間はいいヤツだし楽しいなぁ!」とケラケラ笑っていたら、いつの間にか事態がえらいことになっていたという、バリーが実際に体験したであろう気持ちを、観客も味わえるんですね。これは怖いぞ……そして切ない、とても。

邦題は「アメリカをはめた男」となってますが、どちらかと言うとバリーは「はめられた」方じゃないかと思うんですよ。先に述べた通り、ほとんど政府やマフィアの言いなりになってるだけなので。

東西冷戦という歴史のうねりに翻弄された、ある男の悲劇を、ポップな映像に乗せて追体験してみてくださいませ!

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