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【ネタバレなし】「スターリンの葬送協奏曲」の感想。ロシア当局が上映禁止した問題作の政治コメディ!

2018年、ある一本の映画が、ロシア当局によって上映を禁止されました。

その映画こそ、旧ソ連を舞台にいい歳こいたおっさんたちが出世と保身のために互いを蹴落としあう政治コメディ!
「スターリンの葬送協奏曲」です。

10点満点中7点

「スターリンの葬送協奏曲」のあらすじ・基本情報

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【あらすじ】
1953年・ソビエト連邦。
圧倒的な権力を握り、恐怖政治でソビエトを支配してきた独裁者、ヨシフ・スターリンが死んだ。
ソビエト警察の長・ベリア、モスクワ党第一書記・フルシチョフなど、国の要人たちが次々と集まり後継者選びのための会議を始める。
全員の関心事はただひとつ。
どうすれば自分がソビエトの権力を握れるのか?
賄賂、粛正、クーデター……
史上最大の「いす取りゲーム」がはじまった!

【基本情報】
監督: アーマンド・イアヌッチ
出演: ジェフリー・タンバー、スティーブ・ブシェミ、オルガ・キュリレンコ
上映時間:1時間47分

史実をもとにしたオリジナルストーリー! 政治を知らなくても楽しめるよ

スターリンの死後に起きた実際の権力争いをベースにした映画だけあって、「ザ・デス・オブ・スターリン」には実在の政治家たちが多数登場します!

権力争いの中心となる人物はおもに二人です。
まず、ソビエト警察の最高責任者として君臨する男・ベリア
スターリン政権下では「大粛正」を指揮する立場にあり、都合の悪い人物を次々と処刑、または強制収容所送りにしていた人物です。
後継者争いにおいても、力で相手をねじ伏せる場面が多く見られます。

もうひとりが、モスクワ党の指導者であり事実上のナンバー2であったフルシチョフ
立場的にはスターリンの後継者になってもなんらおかしくないのですが、生真面目な性格が災いしてか、ベリアをはじめとする強面の連中にうまくあしらわれてしまいます。
なんとか自分の指導力を回復させたいフルシチョフですが……いったいどうなる!?

ほかにも、第二次世界大戦中に外務大臣として活躍したモロトフ、スターリンの重要な側近であったマレンコフなど、当時の政治に詳しい人なら思わずニヤリとする顔ぶれが登場します。

とはいえ、物語はまったくの映画オリジナル。
実際の歴史を知らなくても問題なく楽しめます!

予告編にも「LOOSELY BASED ON THE TRUE STORY」(実話通り……なんとなく)って書いてあるしね!

スターリンへの忠誠を競う場面は背筋が凍る馬鹿馬鹿しさ!

スターリン政権下のソビエトは、一歩間違えば粛正の対象になる恐怖の世界でした。
たとえば、

  • スターリンや社会主義の悪口を言ったら粛正
  • スターリンの満足する仕事ができなかったら粛正
  • スターリンに反抗した者、その仲間は粛正

などなど。

中でも恐怖だったのは「密告」です。
映画冒頭のコンサートの場面でも、「音の違いなんてスターリン"でさえ"わかる」と口を滑らせた指揮者が問い詰められている様子から、常日頃スターリンへの忠誠を態度で示し続けないと命に関わることがわかります。

一方、スターリンの側近たちはいわば忠誠心のプロです。
スターリンの死という非常事態にあっても、いかに彼への忠誠を示し続けるかが身体に染みついている。
本編でもいたるところで「誰がいちばん忠誠心が強いかゲーム」が繰り広げられます。
滑稽そのものではありますが、彼らが命や人生をかけてそのゲームを戦っていることを思い起こすと、ある意味で背筋が凍るのを感じますね。


おっさんたちによる「命がけのいす取りゲーム」を見逃すな!



日本での公開日は2018年8月3日に決定しました!

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