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【ネタバレなし】「クレイジー・リッチ!」の感想。泣けるラブコメの大傑作!

「メインキャストが全員アジア系」という異例さで話題となっているハリウッド映画「クレイジー・リッチ!」を観ました!

近年のハリウッド映画では確実に"異色"とされる作品ながらも、本国アメリカでは大ヒットを飛ばしています。
はたしてどんな内容だったのか? ネタバレ無しで感想を書いていきますよ!

10点満点中9点

「クレイジー・リッチ!」のあらすじ・キャスト

【あらすじ】
ニューヨーク大学で経済学を教える、中国系アメリカ人のレイチェル。
彼女の恋人・ニックもまた同じ大学の教授仲間である。
ニックは古い友人の結婚式に出席するためシンガポールに里帰りすることとなり、家族に紹介するためレイチェルを同席に誘う。
空港についたふたりを出迎えたのは、なんとファーストクラスのエスコートサービス……
なんと、ニックの実家はアジア有数のとんでもないお金持ちだったのだ!
ニックの母親・エレノアは、由緒ある家柄にレイチェルのような"移民の子孫"はふさわしくないと、ふたりの交際に猛反対。
レイチェルとニックの恋の行方はどうなってしまうのか?

【キャスト・基本情報】
監督: ジョン・M・チュウ
出演: コンスタンス・ウー、ヘンリー・ゴールディング、オークワフィナ、ミシェル・ヨー
上映時間: 120分

ネタバレ無し感想。アジアンパワー全開の「泣けるラブコメ」だ!

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くう〜〜!「クレイジー・リッチ!」、予想をはるかに超える感動作でした!!
わたくし33歳にして、生まれて初めてラブストーリー映画で泣いてしまいましたよ。

泣ける映画には"映画全体をつらぬく緊張感"が必要だと思うのですが、今作でその役割を担っているのが「アメリカ的個人主義 vs アジア的家族主義」の対立です。

主人公のレイチェルは、見た目こそ中国人で中国語も堪能ですが、育ったのはニューヨーク。
完全に価値観はアメリカ人なのですね。
対して、ニックの母親のエレノアは個人の幸せよりも家族をまず大事にするべきだとするアジア的価値観の象徴。
ニックがろくに里帰りもしなかったのはレイチェルが原因だと考えているし、大学教授という立派な職業ではあるけれども"移民の子供"である彼女の出自も名家にはふさわしくない。
こういった理由から、ふたりの交際にあからさまな不快感を示すわけです。

うまいな〜と思ったのは、レイチェルとエレノアの対立が決してわざとらしく描かれていないこと!
エレノアはあくまでも名家の血筋とメンツを重んじており、"スマート"な方法で交際を邪魔してくるんですね。
一昔前の昼ドラとか「渡る世間は鬼ばかり」みたいなコテコテの演出にはなっておらず、いい意味で予想を裏切られました。

その対立が大きな展開を見せる"麻雀"の場面、そこからクライマックスへと畳みかける語り口、これがもう素晴らしくて号泣!!

鑑賞の際はハンカチを忘れずにね!

アジア系以外は全員背景!「ブラックパンサー」的と言われるのも納得

「クレイジー・リッチ!」がハリウッド映画として非常に特殊なのは、メインキャストが全員アジア系俳優で占められている点です。
アメリカではアジア系といえば当然マイノリティですから、これまでこんな映画はほとんど作られてきませんでした。

ところが、今作ではセリフのある役どころはほとんどがアジア人です。
しかもね……ヨーロッパ系の白人は、文字通り"背景"と化してしまっているんですよ。
この振り切った演出にはぶったまげましたね〜。

シンガポールの華僑社会が舞台の映画なんだから、白人を出さなくても別にいいじゃないですか。
そこをあえて出演させて、しかもセリフをまったく与えないとは!
アジア人男性がヨーロッパ系美女を両脇にはべらせて酒呑んでるシーンなんてのもありますから笑
これまで日陰に置かれることが多かったアジア系人種がこれほど堂々と振る舞う映画とあれば、黒人キャストによるヒーロー映画として話題になった「ブラックパンサー」になぞらえる声があるのも納得です。

だからこそ原題には「Crazy Rich Asians」と「Asians」が含まれてるんだよね。なぜ邦題から外してしまったのか……


そんなキャストの中でもずば抜けてよかったのがオークワフィナ!
ヒップホップカルチャーにかぶれてしまった中国人という、ラッパーである彼女自身をセルフパロディしたような役柄。
従来のハリウッド映画なら黒人俳優が演じていたであろう、見事なコメディリリーフっぷりを見せてくれてるんですよ。
「オーシャンズ8」にも出演している彼女、今作では髪型も金髪ショートにしてガラッと雰囲気変わってます!

音楽にも注目。アジア系へのステレオタイプを打ち破る選曲!

「クレイジー・リッチ!」、音楽の使い方もひっじょ〜によかったです。

ハリウッド映画のみならず、日本の映画やドラマで中国系俳優が出てくるときの音楽って、だいたいお決まりですよね?
「チャラララチャッチャ、チャッチャッチャ〜〜ン」っていうメロディをお琴みたいな楽器で弾いて、最後に銅鑼が「ぐわぁ〜〜ん」と鳴るっていう……
いかにも中国ですね〜ってBGMが定番だったじゃないですか。

「クレイジー・リッチ」には、そんなステレオタイプ的な音楽はぜんっぜん出てきません。
最初に流れる音楽からして、中国語歌詞のジャズです。
ジャズというのは皆さんご存知の通りアメリカ文化の象徴ともいえる音楽なわけですが、それをまったく違和感なく中国語にしてみせる。
例えるならば、演歌を英語の歌詞で歌うようなもんですよ。
これって本国アメリカの観客からしてみれば、かなり衝撃的なはず。

さらに耳をすますと、テレサ・テンの代表曲「つぐない」が聞こえたり、マドンナの「マテリアル・ガール」の中国語カバーがあったり……
(おそらく)欧米の人々が思いもつかないような中華系ポップスの世界を表現してくれているのです!

これをきっかけに、現代の中華カルチャーがもっと認知されるとうれしいなー!

音楽だけでなく、もちろん映像的にも非常に華のある作品で、2時間まったく飽きることがありませんでした。
マリーナ・ベイ・サンズに代表される、キラキラしたシンガポールの都会的な街並み。
それと対象的に、激安グルメが楽しめる"ホーカーズ"と呼ばれるフードコートの、混沌とした熱気。
出席者がみなゴージャスなドレスに身を包んだパーティシーンに、斬新な演出が楽しめる結婚式の場面など……
メジャーな映画ではこれまでなかなか見ることのできなかった景色の数々が新鮮でしたね。

「クレイジー・リッチ!」、まことに最&高な映画でございました。
上映期間中にもう一回は観に行きたいぞ!
アジア人でなくても楽しめるけど、アジア人ならもっと笑えて泣ける映画なので、日本の皆様もお見逃しなく。
日本での公開は9月28日(金)となっております、お楽しみに〜!!


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