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【ネタバレなし】「アイ、トーニャ」の感想。痛快なのにやるせない、ブラックコメディの傑作!

「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」を観ました!

伝説のフィギュアスケーター、トーニャ・ハーディングの壮絶な半生を疑似ドキュメンタリー形式で描いた作品です。

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冒頭でたばこ片手にインタビューに応じるトーニャの映像からすでにかっちょよさがぷんぷんしますね!
実際、「アイ、トーニャ」はヒップでクールな映像と音楽、さらにブラックな笑いが満載のカッチョイイ映画になってます。

今回の感想はネタバレなしです!

10点満点中8点

【あらすじ】
トーニャ・ハーディング。
彼女は1991年の全米選手権でアメリカ人女性として初めてトリプルアクセルを成功させた、トップクラスのフィギュアスケーターだった。

しかし1994年、彼女のライバルであった、ナンシー・ケリガンが何者かに襲撃され脚に重傷を負う。
世に言う「ナンシー・ケリガン襲撃事件」である。
トーニャはこの事件に関係していたと発覚し、スケート選手としてのキャリアを完全に閉ざされてしまった。

オリンピックにも出場するほどのトップ選手だった彼女が、なぜそんな事件を引き起こしたのか?
トーニャ、彼女の元夫、母親などの関係者の証言から、事件の背後にあった物語が明らかになっていく……。


【基本情報】
監督: クレイグ・ガレスピー
出演: マーゴット・ロビー、セバスチャン・スタン、アリソン・ジャニー
上映時間: 121分


痛快で笑える! だからこそ、最後の最後はやるせない

文字通り痛快。最初から最後まで痛いほど気持ちいいのが「アイ、トーニャ」です!

主人公のトーニャはとにかく型破りな人物。
スケートの腕前は超一流ながら、人間としてはかなりサイテーの部類です。
口汚いわワガママだわで、一緒に過ごしてたらノイローゼになるくらい気分屋。

にもかかわらず、映画を観ているとどんどんトーニャのことを応援したくなってきちゃうんですよ。
自分の気持ちを隠さず正直に生きているトーニャが魅力的だからかな。
トーニャの描き方を「スコセッシ風のアンチヒーローのようだ」と評したメディアがあったようです。
言い得て妙! すんげー悪くて、すんげーカッコいいのだ!

映画全体ではかなり“痛い”シーンが多いんですけど、
それでもポップな音楽と軽快なカメラワークの連続、さらに毒の効いたコメディ演出のおかげで雰囲気が暗くなるどころか、かなり笑える映画になっています。
「デッドプール」 が好きな人なら気に入ると思う。

そして笑える映画だからこそ、余韻も尾を引くってもんです。
これだけ痛快な映画なのに、僕はとんでもないやるせなさを感じてしまいました。
スケーターとしての未来を奪われてしまったトーニャ。
彼女が選んだ道と、その理由がもう……あああああ!!!(じたばたじたばた)

ゲラゲラ笑って観た映画だからこそ、切なさも段違いなのだ

登場人物がみんなゲス!でも魅力的!

「アイ、トーニャ」、実在の人物を下敷きにした作品ながら、登場人物のキャラ立ちが強烈。そろいもそろってゲスばっかです。でもみんな嫌いになれないのよ!

まずは主人公、トーニャ。
トップスケーターとして競技会を牽引しながらも、極度の負けず嫌いで傲慢な性格。

氷上での彼女はまるで天使のようにキラキラ。
しかし採点が気に入らなければ審査員に暴言を吐いたりコーチにものを投げつけたり。
せっかく全米選手権で優勝したかと思えばさらに傲慢になり、
「わたしの大好きな冷凍パイが無いじゃない!!」と些細なことで夫に暴力を振るう始末。

でもそれは、自分にはスケートしかないという不安の表れでもあるんですよね。

トーニャの夫、ジェフ。
最初は優しそうだったのに、同棲し始めた途端に暴力的な本性をあらわにするDV男です。
こういう奴に限って、振られるとやたら粘着質になってストーカー化しちゃうんだよね〜。

で、トーニャを言葉の暴力で支配する"毒親"、ラヴォナ。
普通の母親が注ぐ愛情のかわりに、トーニャに徹底的にスケートを教え込み彼女をトップ選手に育て上げるわけですが、
娘を自己実現の道具としか考えていないゲスさがぷんぷんします。
どこか超然とした雰囲気も人間離れしていてかなり怖い。
そこはかとない美輪明宏っぽさあるね。

ちなみにラヴォナを演じたアリソン・ジャニーは、この役でゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞!
アカデミー助演女優賞にもノミネートされました。
渾身の"やな奴"演技は必見です。

そしてトーニャのボディガードであり、事件の重要な鍵を握る男、ショーン。
あほです。
描かれ方があほすぎて、モデルになった本人がかわいそうになるレベル。
でもなんだか憎めないんだよぉ〜。


この映画をもっとも楽しめる人は?

1991年当時、トーニャ・ハーディングのトリプルアクセルをリアルタイムで見ていたそこのあなた!
ぜひ「アイ、トーニャ」を映画館で観てください。
なぜなら、あなたがこの映画を一番楽しめる資格があるからです。

映画序盤のワンシーンが、あとでまったく違う意味をもって見えてくるって演出、よくありますよね?
親切心から出たと思ってたセリフの裏に、強烈な悪意が潜んでいたとか、何気なく置かれた小道具に実は重要な役割が隠されていたとか。

「アイ、トーニャ」は27年越しの伏線回収なんですよ。
全米が熱狂したトリプルアクセル。
でもその背後には壮絶な物語が隠されていて、後に起こる悲劇の序章にもすぎなかった。
「アイ、トーニャ」を観た上で再度、あのトリプルアクセルの映像を目にすれば、当時とは大きく異なった別の意味を受け取れるでしょう。


もちろん、1991年のことなんか覚えてない、生まれてないって人でも楽しめるよ!


暴力セックスまた暴力、痛快なのにやるせない、ノンフィクション・ブラック・コメディにノックアウト!されちゃってください〜。

日本での公開予定は2018年5月4日です!
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