モヤシネマ

最新洋画、ときどき邦画

【無料あり】「みんなのいえ」のあらすじ・感想。伊丹十三風ほんわかコメディ……になりそこねた作品【ネタバレ】

今回は、
三谷幸喜監督の第2作目
「みんなのいえ」
取り上げます!

「家を建てる」という
人生に一度の大イベントを題材に
伊丹十三テイストの
ほんわかコメディを目指した……

作品のはずなのですが、
個人的にはモヤモヤする内容でした。

10点満点中5点

「みんなのいえ」の予告編・あらすじ

www.youtube.com

憧れのマイホーム建設を計画する夫婦。

設計は妻の友人である
新進気鋭のデザイナー、

施工は妻の父親である
ベテラン大工に依頼することに。

ところが、
先進的なデザインと
伝統的な棟梁の考えが
ことあるごとに衝突し、
トラブルが相次いでいく。

果たして、
ふたりの夢のマイホームは
無事に実現できるのだろうか?

「みんなのいえ」のキャスト

柳沢英寿: 唐沢寿明
家の設計を依頼された建築デザイナー。
アメリカモダニズムの考えを活かして
おしゃれな家を建てようとするが……

岩田長一郎: 田中邦衛
大工の棟梁。
家の施工を任されるものの、
あまりに先進的な柳沢の考えを理解できず、
昔ながらのやり方でしか
家は建てられないと主張する。

飯島直介: 田中直樹(ココリコ)
バラエティ番組の放送作家。
柳沢と長一郎、両方の顔を立てようと
苦労するものの、なかなかうまくいかず
気を病んでいく。

飯島民子: 八木亜希子
直介の妻。
八方美人な直介の態度に
イライラをつのらせていく。

「みんなのいえ」のネタバレ感想。構造を優先しすぎてお話がおざなりでは

「みんなのいえ」の構造は
非常にわかりやすくて、

  • モダン建築を建てたい柳沢
  • 日本古来の建築にこだわる長一郎
  • ふたりの間で板挟みになる直介

この3人の綱引きをそのまま、
ストーリーと笑いの牽引力としています。

最初はぶつかってばかりだった
柳沢と長一郎が、
「ものづくり」を通じて和解し、
最後は素敵な家ができあがる……

そんなお話の"はず"だったんですよね。

ただ実際は、
長一郎がただただ
古い考えを振り回して
柳沢をいじめてるだけ
になっちゃってて、

いまひとつ対立と和解に
カタルシスが生まれてないんです。


柳沢が見ててかわいそうになるんよね

和解シーンに至るまでの過程にもやもや

僕が一番もやもやした部分こそ、
柳沢と長一郎の和解シーンです。

流れはこんな感じ。

大雨の中を走る柳沢の車が横転。
積んでいたバロック式家具が壊れてしまう。


柳沢は途方に暮れるが、
長一郎の職人の勘によって修復に成功。


「洋の東西が違えど、職人の考えることは同じ」
いつの間にか両者は和解していた……


う〜ん、いいシーンだ!

……ここだけ見ればね。

実は和解シーンの直前に
こんな場面があるんです。

家の内壁はこの色にしたい、
という理想がある柳沢。


しかし長一郎と折り合いがつかず、
結局、既製品のペンキで妥協する。


が、納得のいかない柳沢は
壁にペンキをぶちまけてしまう。


状況を見て愕然とする長一郎たち。
そこに柳沢が現れ、
「いい色になったじゃん?」
とひとこと。


長一郎は激怒し
「仕事の邪魔するやつは帰れよ!」
と柳沢を突き飛ばす……

いやいやいや、
これ結構な溝じゃない??

この流れで、長一郎が
柳沢の家具を直してあげようって
気持ちになる??

もちろん、柳沢も長一郎も
大雨の中家の様子を見に来ていたから、
そこで心が通ったとも捉えられるけど。

普通なら
「もうコイツとは仕事できねぇ!」
となりそうなほどの大喧嘩から
急展開の仲直りってのは、
ちょっとついていけませんでした。


職人の気持ちは俺にはわからんぜ……

完成した家の良さがいまいちわからない

「みんなのいえ」、
映画の最後にはなんとか家が完成します。

アメリカのモダン建築と
日本の職人の技術が
見事に融合した夢のマイホーム……

の、割には
見た目がずいぶんと普通です。

長一郎がこだわっていた「聚楽」や
柳沢が探していた「タイル」も
画面に印象深く映るわけでもなく
「ふうん……」って感じ。

どれだけ素晴らしい家ができたのかが
いまひとつよくわかんないんですよ。

家の中身まで
予算を割けなかった
という事情はあるかもしれませんが、
物語の根幹になる部分だけに
もう少し丁寧に見せてほしかったな〜。

前作「ラヂオの時間」でも、
結局できあがったラジオドラマの
良さがあんまりわからない
という大きな問題点がありました。

【無料あり】「ラヂオの時間」あらすじ・感想。三谷幸喜によるハートウォーミングコメディの傑作!【ネタバレなし】 - モヤシネマ
www.moyacinema.com


「みんなのいえ」でも
おんなじ課題を引きずっちゃってるのは
否定できないんですよね。


家を建てる話なのに、家そのものが印象に残らないとは……


主演の唐沢寿明、田中邦衛の好演、
夫婦役を演じた
田中直樹と八木亜希子の
主役ふたりを引き立てる
絶妙の存在感のおかげで、

全体として楽しく
見られる作品にはなっていますが、

もう少し細部にこだわれば
傑作になってただろうなぁ
と思わざるを得ない、
自分にとっては
もったいない作品でした。

プライバシーポリシー