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【ネタバレ】「ミッドサマー」あらすじ・感想・考察。内容を読み解く6つのポイントを解説!【地獄みたいな映画】

「へレディタリー/継承」で
鮮烈なデビューを飾った監督
アリ・アスターの第2作。

「ミッドサマー」を観ました!

もうね、いろんな意味で
地獄みたいな映画でしたね。

グロ耐性のない人にはまったくオススメしません。
前作「へレディタリー」が大好きな人でも
「ミッドサマー」は受けつけないかも。

とにかく恐ろしい何かを
目撃したいという人のみ、
覚悟して鑑賞してください。

では、ネタバレ有りで感想書いていきます!

10点満点中6点

「ミッドサマー」の予告編・あらすじ

www.youtube.com

アメリカの大学で心理学を学ぶダニは、
ある事件により家族を失ってしまう。

ボーイフレンドのクリスチャンとの
関係は続いてはいるが、どこかぎこちない。

その年の夏、ダニたちは
学友のペレの故郷である
スウェーデンの小さな村へと出かける。

そこでは90年に一度の祝祭が行われ、
村人たちは快くダニたちを迎え入れる。

しかしそれは、
世にも恐ろしい宗教儀式の始まりだった……

「ミッドサマー」の登場人物・キャスト

ダニ: フローレンス・ピュー
心理学専攻の学生。
妹が両親を道連れに自殺して以来、
心に大きな傷を抱えている。

クリスチャン: ジャック・レイナー
人類学専攻の学生。
ダニとは4年付き合っているが、
その関係は冷めかけている。

ペレ: ヴィルヘルム・ブロムグレン
クリスチャンの学友のスウェーデン人。
人里離れた村の出身であり、
故郷の祝祭に友人たちを招待する。

ジョシュ: ウィリアム・ジャクソン・ハーパー
クリスチャンの学友。
北欧の伝統文化を研究しており、
論文執筆の調査のため
ペレの故郷を訪れる。

マーク: ウィル・ポールター
クリスチャンの学友。
学業には熱心でないようで、
祝祭の最中でも態度が悪い。

「ミッドサマー」のネタバレあり感想

注意!ここから先、グロテスクな表現が含まれます

「ミッドサマー」の内容を
ひとことで表すならば、
真っ昼間から繰り広げられる悪夢
これに尽きるでしょう。

舞台は夏のスウェーデン。
夜9時を過ぎても太陽は沈まず、
闇のやってこない世界です。

緑は生い茂り、
花は咲きほこり、
空はどこまでも青い。

そんな美しい自然を背景に
人がばったばったと惨死していく
とんでもない映画でした。

飛び降り死体の
ぐちゃぐちゃになった頭部を
大写しにする映画とか、
もうどうなってんですか。


監督はあたまおかC


しかしどうにも、
前作「へレディタリー」に比べて
間延びしている感じは否めません。

とにかく淡々と儀式が進み
淡々と人が死んでいくので、
物語上の起伏があまりないんですよね。

この手の映画、普通なら
主人公たちが逃げようとして
村人が追いかける、みたいな
筋書きになるところですが

「ミッドサマー」ではみんな
人類学研究の調査に来てるので、
逃げようという気にならない。

ただただ異文化を受け入れ、
儀式を理解しようとしている。

それが新しくもあるのですが、
エンタメとしては成立してない
ようにも感じました。

映画初心者はお断り、
完全にマニア向けのカルト映画として
楽しむのが正解のように思えますね。


……では感想はこのくらいにして、
次は考察編にうつります!

「ミッドサマー」を読み解く6つのポイント

ポイント1: ダニの部屋の内装が示す意味とは?

物語の伏線は、
スウェーデンに飛ぶ前から
すでに張られていました。

まずダニの部屋に飾られている絵。

バイキングの少女と巨大な熊
印象的に描かれています。

これはダニとクリスチャンの
関係性を象徴していると言えるでしょう。

熊はその後も画面に登場します。

オリの中に閉じ込められている熊。
火に包まれる熊の絵。
そして、熊の毛皮を着て焼かれるクリスチャン……

クリスチャンとの関係を
克服する過程が、
すでに画面の中で語られ始めていたわけです。


アリ・アスターはほんとに芸が細かいよ


また、
ダニの部屋にやたらと
植物があるのにも気づいたでしょうか。

ペレの従兄弟から
ドラッグをもらって以降、
ダニは植物の力を強く
感じるようになっていきます。

しかし彼女は最初から、
植物に惹かれていたんですね。

部屋の中にあるのは葉っぱばかりでしたが、
スウェーデンに来ると芝生や樹木、
そして花々からエネルギーを受け取っていく。

最終的には
全身を花で包まれた
「5月の女王」として覚醒するのです!

ポイント2:「アテストゥーパ」の儀式は実在した?

「ミッドサマー」のヤバさを
一瞬で示してくれる
"アテストゥーパ"の場面。

72歳を迎えた老人が、
崖の上から身を投げて死ぬ
という恐ろしい儀式です。


ぐちゃぐちゃの頭部の大写し、エグいことやるわ


これは決して
映画のなかだけの作り物ではなく、
古代北欧の伝説をもとにしています。

参考▶Ättestupa - Wikipedia(※英語)

「アテストゥーパ」とは
スウェーデン語で「崖」を意味する
言葉だそうです。

北欧に詳しい人にとっては
有名な儀式のようで、
ジョシュは儀式の中身を
知っているような素振りを
見せていますね。

ペレはおそらく

「うちの故郷では
いまだにアテストゥーパを
やっているぞ。
見に来ないか?」

とでも言って、
ジョシュを誘ったのでしょう。

ポイント3: 何度も登場するルーン文字、その意味は?

村の中では「R」に似たルーン文字
何度も登場します。

これは北欧に実在する文字で、
イチイの木を象徴しているそうです。

参考▶ルーン文字 - Wikipedia

しかし時々、
「R」が鏡写しになったルーン文字
登場します。

これは架空の文字のようです。

僕の解釈ですが、
「R」は死、鏡文字の「R」は生を表している
のではないでしょうか。

長老たちが飛び降りる崖、
その上の碑文には「R」が掘られています。

一方で、
ペレがダニにプレゼントした似顔絵の
右下には鏡文字の「R」」が書かれていました。

生と死は表裏一体、
同じものだという考えが
この文字に象徴されていると
考えられます。

同じような意味では、
乾杯の儀式も
生と死が対称になっていました。

崖から身を投げた長老2人は
お茶を飲む→グラスを捧げ合う
という順で乾杯していましたが、

ダンスの儀式に参加したダニは
グラスを捧げ合う→お茶を飲む
という順で行っていましたね。


生と死の対称性、ほかにも探せば見つかりそう!

ポイント4: サイモンはなぜあんな殺され方をしたのか?

ペレの従兄弟が連れてきたサイモン。

物語中盤で行方不明になりましたが、
鶏小屋の中で
背中を大きく切り裂かれた
惨殺死体となって発見されました。

実はあれ、
ブラッドイーグル(血のワシ)と呼ばれる
古代北欧の処刑方法なのです。

参考▶血のワシ - Wikipedia

相手をうつ伏せにして
背中を切り開き、
肺を引きずり出して
翼のように広げる

という、
なんともおぞましい殺し方です。

実在の処刑方法なのか、
伝説上のものなのかは
専門家でも意見がわかれるそうですが。

ただの空想ではなく、
冒頭の「アティストゥーパ」と同様、
北欧の伝承をもとにしているんです。

ちなみにですが、
よく見るとサイモンの肺が
動いてるんですよね……

もしかしたら、
クリスチャンがサイモンを
発見した時点では、
彼はまだ生きていたのかもしれません。

こっっっっわ!

ポイント5: "命を捧げる"ことに意味はあるのか?

「ミッドサマー」では、
命に関する異質の価値観が提示されます。

老いさらばえて死ぬのは悪いこと。
若い世代のために命を捧げることが
喜びである、と語られるのです。

一般社会に住む我々には
とても理解しがたい考えですが、
ダニにはある意味救いになっています。

突然死んでしまった妹、
その巻き添えを食って
殺された両親の死にも
意味があったと考えられるからです。

しかし!
ここから先が
アリ・アスターの意地悪なところ。

最後の最後で、
自ら死ぬことを志願した若者が
悲鳴をあげながら炎に包まれる
場面を入れてくるんですね。


ほらー! やっぱり死ぬのって怖いじゃーん!!


ヨボヨボになっても寿命が尽きるまで生きるべきか、
信仰の中で自ら時期を定めて死ぬべきなのか。

「ミッドサマー」は
全然答えを示してはくれません。

観客自らが死について
考え続けざるを得ないように
作られた結末なんですよ。

ポイント6: なぜダニは最後に笑ったのか?

主人公のダニが、最後の最後で
実に意味ありげな笑顔を浮かべて、
「ミッドサマー」は終わります。

あの笑顔の意味は
なんだったのでしょうか?

僕の意見では、
形だけの家族から離れて
本当の家族を手に入れられたから
ではないかと思います。

ダニを支えてくれるはずの
クリスチャンとは、
ずっと関係がギクシャクしていました。

恋人であるとはいいつつ、
付き合った記念日も
誕生日すらも覚えてません。

一方で、ダニを親身になって
支えてくれたのはペレです。

ダニと妹や両親との関係性は
はっきりとは描かれません。

しかし、
最後に幻覚として現れた両親ですら、
ダニに声をかけない点を見ると、
彼女は家族の中でも孤立していたのでは
ないかと思われます。


ずっと寂しい思いをしていたんだね


ダニは儀式の中で
「5月の女王(May Queen)」に選ばれ、
村人たちから大きな祝福を受けます。

また全身を花飾りで覆われ、
物語序盤から感じていた
植物のパワーを受け取るのです。

極めつけには、
形だけの恋人だった
クリスチャンを葬り去り、
過去から完全に決別します。

一見バッドエンドですが、
ダニにとっては完璧な
ハッピーエンドになっている。

これが「ミッドサマー」という
映画の正体なのです。

まとめ 〜カルト映画の新たな古典が誕生した〜

「ミッドサマー」、実に恐ろしい映画でした。

ホラー映画としてのカタルシスはなく、
真夏の太陽のもとで
ひたすらおぞましいものを映すという、
とんでもない芸当をやってのけてくれました。

正直なところ
物語の面白さとしては
「へレディタリー」が上かと思うのですが、

「ミッドサマー」もまた
カルト映画の古典として語り継がれることに
間違いはないでしょう。

お行儀のいい映画ばかりが
もてはやされがちな昨今のこと、
こういう劇薬のような映画も
たまには観ておきたいものですね。


アリ・アスター監督の前作
「へレディタリー/継承」は、
↓こちらの記事↓で感想・考察を書いています。

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